正しいニーグリップの基本ポジションと圧力配分
ニーグリップとは、膝とタンクの間に適切な圧力をかけて車体を自分の身体に固定し、ライディング中の安定感を向上させるテクニックです。膝の内側(大腿部)をタンクの幅が狭くなっている位置に軽く押し当て、上下左右に対して約2~3kg程度の力をかけるのが基本。押し込むのではなく「引き寄せる」イメージで行うと、ハンドルやステップに余計な力が入らず、腕や肩の疲労を軽減できます。圧力は走行中に常に一定量を保ち、急制動やブレーキング時には一瞬だけ圧を強めると荷重移動に合わせて車体を極限までコントロールしやすくなります。常に膝を柔らかく曲げ、足首はタンク下に軽く接触させることで、上下の衝撃を膝関節で吸収できるようになります。
タンク形状別ニーグリップ最適化テクニック
タンク形状はモデルや年式によって大きく異なり、ニーグリップのやり方にも調整が必要です。
細身タンク
膝でしっかりホールドしやすいが、滑りやすい樹脂塗装やツヤのある表面が多い。滑り止めパッドやシリコンパッドを併用し、摩擦力を高めることで安定感が増します。
ワイドタンク
幅が広くホールドポイントが限定されにくい反面、圧を分散しやすいため「引き寄せる」意識が大切です。膝をタンクの両側から中央へ軽く引き寄せるように締めると、タンクの曲面を利用した安定性が得られます。
モダンシート一体型タンク
タンクとシートの境界が曖昧なデザイン車両では、ニーグリップしづらい場合があります。膝の位置をやや後方へずらし、シートの縫い目部分をホールドポイントにすると、ズレを抑えやすくなります。
いずれの場合も、ニーグリップの練習中はバイクを完全に停止させた状態で膝の当たり位置を確認し、実走前にミラーやタンク側面のペイントが擦れていないかチェックすることをおすすめします。
スポーツ走行とツーリング走行での使い分け
ニーグリップの効果を最大限に発揮するには、走行スタイルに合わせた圧力・姿勢の調整が必要です。
スポーツ走行
コーナリング時はリーンイン(イン側の膝をタンクに押し付け、アウト側の膝を開いて荷重移動を起こしやすくする)を意識。イン側の膝はタンクにしっかり押し付け、アウト側の足はステップにしっかり乗せてトラクションをコントロールします。バンク角が深くなるほど膝への圧力を強め、コーナー侵入から立ち上がりまで車体を身体と一体化させることで、より高いグリップ感が得られます。
ツーリング走行
長時間の走行では圧力をやや弱めに設定し、膝関節や腰への負荷を軽減します。上下の衝撃を膝で吸収し、路面の凹凸でバイクが跳ねても体幹を使って車体を安定させることが重要です。ペースを保ちながら、アクシデント時には膝を一瞬だけ締め、風圧や揺れに対する抗力を増やして安全性を確保しましょう。
ニーグリップ上達の練習メニュー
- 停車ホールド練習:バイクをニュートラルで立てた状態で膝をタンクに当て、5秒ホールド→リリースを20回繰り返し、圧力感覚を身体に覚えさせる。
- 直線低速キープ:アイドリングから半クラ・低速(5~10km/h)で直線を100mほど走行し、膝の圧力を保ったまま車体がブレずに走れるか確認。
- スラローム:幅2m、間隔3mのコーンを並べ、ニーグリップを維持したまま低速スラロームを3往復。速度変化に応じた圧力調整を意識。
これらを週1~2回、計1か月程度継続すると、ニーグリップの精度が格段に向上します。練習後はタンクパッドの摩耗状態やニーグリップ時の体感をメモし、フィードバックを重ねることで、さらに安定したライディングが可能になります。